悪魔的に双子。
真昼と唯流に初めて引き合わされたのは、わたしと有志、唯流と真昼、ともに小二のときだった。


といっても、私たちは四月生まれで、あちらは三月生まれなので、ほぼ一歳違いという事になるだろうか。



ポカポカと暖かな春の宵。


全国展開してるファミレスのチェーン店で、お父さんは美しい三人をわたしたちに紹介した。


一人は大人の女性。こののち、わたしたちの義母となるあみこさん。


背景がドリンクバーなのが残念に思えるほどの美貌をたたえたその人の背には、黒のストレートヘアがシャンプーの宣伝ができそうなほど綺麗に波打っていた。


「よろしくね。」


そう言ってあみこさんがにっこりした時、心がホワンとなったのを覚えてる。


美しいあみこさんの左右から、微妙に顔をのぞかせている二人がいた。


顔をだす角度といい、足の向きといい、あみこさんを中心に不思議なほどシンメトリーな配置にいる二人は、わたしたちがこれまで見てきたどんな子どもより愛らしい子どもだった。


母親譲りの白い肌に、でっかくて色素の薄い目と、ふわふわの髪。


桜の花びらみたいな唇に、やわらかく整った輪郭。


片方は髪が長くて白いワンピースを着ていて、片方は髪が短くてズボンをはいているから、男の子と女の子だということは分かるけれど。


わたしと有志と同じで


見分けのつかない二つの顔。


ただし、わたしたちとは出来が違う。


「「天使……?」」


わたしと有志は双子の神秘を発揮して、二人同時にマヌケな声をだした。


わたしたちは、美しい双子に見惚れていた。


くすっ


あちらの双子も、タイミングを見計らったかのようにピタリと声を合わせてわたしたちに笑ってみせた。


男の子の方と目が合って、わたしの心がとくんっと跳ね上がる。


二人の笑顔があんまり可愛かったから、わたしと有志は真っ赤になってうつむいた。


今思えば、これが不幸のはじまり。


だって、あの時は知る由も無かった。


彼らが天使ではなく悪魔だったなんて。


わたしたちが俯いてるすきに、顔を見合わせて、いたずらっぽく瞳を輝かせていたことも。


子どもの無邪気さそのもので、このマヌケそうな双子でどう遊んでやろうかと画策していたなんて。


そんなこと分かるはずもなかった。


ただ、あの瞬間見つめあった男の子の、澄んだ瞳に頬を染めていた。


あの天使が、『真昼』という名をもつ悪魔だということを、わたしはいずれ、知ることになる。










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