悪魔的に双子。
「それではエントリーナンバー6番、園村唯流さん、どうぞ!」


思っていたよりはるかに早く唯流の出番が来て、わたしは真昼と顔を合わせた。


「唯流って飛び入り参加なんでしょ?こんなに出番早いもんなの?」


真昼が首をすくめる。


「こんなもんなんだよ、こんなの出たがるやつそうそういるもんじゃないし。」


ごもっとも。


唯流がマイクを持ってステージの中心に立つ。


体育館がそれまでとは違う意味でざわざわした。


遠くからでもいつもと同じ仏頂面をしているのが分かる。


ものすごく偉そうだ。


しかしそれまで出てきた女の子を束にしたよりも可愛い。見た目は。


どこからとってきたのかふわふわ栗色の髪の毛のうえにちょこんと赤いリボンをつけている。


ステージに立つための、せめてもの武装というわけか。


いったい唯流は何をするつもりなんだとわたしたちが固唾をのんで見守る中、唯流はマイクを通して体育館中に響くほど大きく息を吸って、唐突にのたもうた。


「さっきまでステージに立ってた人たち、つまらなかったです。ダンスだの、歌だの、漫才だの、ありきたりだもん。」


……ゆいるーーーーーーーっ‼


心の中で叫んだのは恐らくわたしだけではない。


真昼と有志はもちろんのこと、ステージを見守る教師陣、唯流の数少なき友人たち。


大多数の生徒たちは何やら面白いものが始まったと興味津々の様子だが、ステージでパフォーマンスをした生徒の友達たちは多分怒っている。


ふざけんなって声が聴こえたのは幻聴ではない。


それも当然のこと。


友達のしたことがけなされて嬉しいやつなんてそうそういない。


唯流はそんなのお構いなしでさらに続けた。


「だから唯流は、もっと楽しんでもらえることをしたいと思います。…………………中学生って、愛とか恋とか好きだよね」


唯流はいつだって唐突だ。


しかしこの話の方向転換には、一緒に暮らしているわたしでもなかなかついていけなかった。


いきなり愛だの恋だのとは。


「自分が誰のこと好きーって言ってきゃあきゃあするのも好きだけど、人が誰好きとか、誰と誰が付き合ってるとか、誰が告白したとか振られたとか、皆好きだと思います。」


断定しちゃったよ。


とわたしはあっけに取られているあいだに、真昼が楽しそうに言った。


「今日の唯流は話上手だね。」


いつもの言葉足らずに比べれば、確かによくしゃべっている。



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