悪魔的に双子。

有志、泣く

「青、青ぉ〜僕どうしたらいいんだろ、学校恥ずかしくてこれないよぉ」


有志が本泣きしてわたしの腕にすがりつく。


「どうしたらいいって……どうしようもないよ」


わたしもほとほと困りはてて首を竦めた。


あの後、有志の顔を知る者に質問攻めにされては敵わないと、あわてて体育館を出て、さっきまで真昼といたバスケットコートに向かった。


そしてこの現状。


有志は泣く。


わたしは困り果てる。


真昼は笑いが止まらない。


「ぷっ、ふはっさすが唯流だよ。なにあれっ」


「ま、ひるく、んひどっひくっいっ」


泣きすぎて有志のしゃべり方がなんか面白いことになっている。


真昼を白い目で見てやると、意地の悪そうな笑顔が返ってきた。


「やぁー、仲睦まじいことで。唯流があんなことする理由も分かるよ。
……その前に『おにーさん』、そこまで泣くことじゃないでしょ」


……まぁ、わたしもそう思わんことはないが。


「もぉ有志、終わったことは仕方ない。いさぎよくクラスメートに質問攻めされなさい。」


「……うん」


有志は哀れな様子で小さくうなづいた。









有志に対して、ホントに唯流に返事しないの?とはわたしも真昼も言わない。


唯流が有志好きすぎなことは、園村家の人間にとっては公然の秘密ってやつだから。


返事なんて、とっくの昔にしてても別に驚かない。

ただ、唯流の気持ちを知る人間が約600人ばかり増えただけの話。


唯流がこんな行動に出るまでの経緯は、正直釈然としないものがあるけど。
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