悪魔的に双子。
後日談
文化祭が無事?に終わり、二日の休みを挟んだ授業日の放課後、いつも通り音楽室でピアノを弾いていたわたしのもとに、なぜかふらりと唯流がやってきた。
「どうしたの?」
驚くわたしに、唯流は珍しくにっこりと微笑んでみせた。
「たまには青のとこにいようかなって」
「……はぁ」
唯流の行動原理はいつもながらに読めない。
予想通りというべきか、あの大告白のあと顔を突き合わせた有志と唯流は呆れるほどにいつも通りだった。
わたしの方がたじろいでしまうくらい。
まぁ、有志が今日学校の中でどんな目にあったかは知らない。
半泣きになってることは予想にかたいけど。
「青、いつもここにいるの?唯流と一緒にバスケ部のとこにいたらいいのに」
「……うーん、まぁ、それは遠慮しとく」
苦く笑うわたしをよそに、唯流はふらふら楽器の間を往き来して、木琴をたたいてみたりトライアングルを持ち上げてみたりと忙しそうだった。
「ねぇ、青」
再びピアノに向き直って適当に音を鳴らしていたわたしは、唯流の声に体をねじった。
「ん?なに」
「有志は唯流のものだよね」
「………」
感嘆してしまいそうなほどに、強い強い瞳が、じっとこちらを見据えて言った。
強くて、少し怖いくらいだけど、どこか不安げで心もとない光を宿している。
「……唯流のものかは分からないけど」
わたしはなんとか声を絞り出して、一音一音唯流に伝えた。
「わたしよりは、はるかに唯流のものだよ」
ああ、有志、もの扱いしてごめん。
心の中で有志に謝るわたしを知ってか知らずか、唯流は綺麗な綺麗な笑みを浮かべて、何事もなかったかのように再び楽器をいじり始めた。