悪魔的に双子。
大切な季節
冬休みが始まる一ヶ月くらい前だったと思う。
いつものように有志と唯流とわたしの三人で家路を歩いていた。
すっかり冷たくなった空気に身体が芯から冷えて、自分の家の灯りが見えた時には、ほぉと安堵の息が漏れた。
「冬ってやっぱ苦手。寒いのって耐え難いんだもん。」
わたしの言葉に、有志が微笑む。
「そぉ?僕はけっこう好きだけど……」
ふいに有志が口を閉ざし、立ち止まった。
驚いたらしい唯流が少しよろける。
お人形みたいに真っ白だけど、寒さのせいで少し赤くなった頬を膨らませた。
「有志っ、いきなり止まらないでよっ」
「母さん」
有志の声には戸惑いが満ちていて、それでいて冷たかった。
「………え?」
わたしはゆっくりと、有志の目が向かう先へ視線を滑らせた。
家々の明かりに照らされるだけの暗い道路に、一人たたずむショートカットの女の人。
口の中が急激に渇くのを感じた。
心臓がどくどくとうるさい。
女の人はわたしたちに気づいたらしくこちらを向いて、控えめな笑みを零した。
「有志………青」
懐かしい柔らかな声に心が震える。
「……マ…マ」
その人は、紛れもなくわたしと有志の母親だった。