悪魔的に双子。
「ばかっばかっ‼真昼に何が分かるの?なんでそんなこと言うの⁈ばかっ」


意味もなしに叫んで、何度も何度も真昼の体をこぶしでたたく。


わたしらしくない。


冷静な自分が怒り狂うもう一人に話しかけてくる。


わたしらしくない。


真昼はわたしのこぶしはよけようとはせず、そのまま受け止めていた。


それがなんだかバカにされているように感じて、ますます腹が立ってくる。


「どうしたの?大声だして。」


わたしの叫び声を聴きつけた有志と唯流と、他の部屋で勉強していたらしい百合人くんが駆けつけてくる。


さすがにこの状況が恥ずかしくなって、馬鹿馬鹿と罵っていた口をつぐみ、こぶしをほどいてそのままぎゅっと真昼の服を掴んだ。


「……どうしたの?」


有志の不安げな声が聞こえる。





………そう、有志はたいていいつも不安げで、臆病で、泣き虫で、小さい頃からわたしが守ってあげなくちゃって思ってた。


でも心の中ではちゃんと知ってた。


ホントは有志の方が強いこと。


あの時、お父さんを立ち直らせたのは有志だってこと。


わたしは有志の進む方へ着いていった。


有志を守らなきゃいけないからだと、自分に嘘をついた。


有志を守ることで、お父さんのことも守っている気になっていた。


ホントは怖かった。


わたしだけ、間違った方向に進んで行くのが。


有志の心がわたしから離れて行くことが。


だから、有志がママに会わないといったから、わたしも会わないことにした。


真昼に見抜かれた。


正直、すごく悔しいし、恥ずかしい。


真昼の言うとおりなのだ。


わたしは、自分じゃ何も大切なこと決められない、間抜けなブラコンのガキだ。






「……ごめん、なんでもないの」


無理矢理笑顔をつくり、有志に向かって微笑む。


「ちょっと、ね、大声だしたくなっただけ」


我ながら苦しい言い訳だが、今は頭が回らない。


再び真昼と向き直り、天使みたいな、でも時に意地悪くゆがむ顔を見上げた。


色素の薄い瞳には、先ほどまでのわたしをあざける色はなくて、その代わりに、どこか苦しそうな色が浮かんでいた。


なんで真昼が苦しそうにしてるんだ。


あんたは関係ないのに。


さっきまで笑ってたくせに。


「……いっぱい殴ってごめん」


真昼にだけ聴こえるよう小さく囁いて、指が白くなるほど強くつかんでいた布地をゆっくり離した。


「………青」


真昼のわたしを呼ぶ声が、ひどく切なかった。









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