悪魔的に双子。
「青……」


真昼の頬がふっと緩み、目がいつになく優しく細められた。


「僕だって恥ずかしかったよ」


「うそ……だってあんなにひょうひょうとしてたのに」


「内心赤面してたよ。あと夜は自分の部屋で泣いてた」


「えっ……」


驚いて真昼を見つめると、天使のような微笑みを向けられた。


「青にキスできたことが嬉しくて、青に嫌われたらどうしようってすごく怖くて。いろんなものがごちゃまぜになって、どうしていいか分からなくて」


人前でこんなに近くに寄り添うなんて、ふつうならあり得ない。


でも今は、真昼の瞳から目をそらせなかった。


「ねぇ、青」


真昼の手の甲がふわりとわたしの頬をなでる。


「僕の好きがどんな好きかは、もうわかるでしょ?」


天使に魅入られたように、こくりとうなづく。


「青は………僕のこと、好き?」


「………好きだよ」


「それはどういう好き?」


「………」


どういう好き?


そんなこと考えたことない。


真昼はわたしの大切な家族。


ひねくれてるけど、ほんとは優しくて可愛くて、どこまでもピュアな………


大切な弟。


でもそれだけなのだろうか。


それだけなのかと問われて、素直にうなづけるだろうか。


どうして真昼に見つめられるとドキドキする?


そばにいたいと思う?


どうしてキスされても嫌じゃない……


それどころか、心のどこかで嬉しいと感じていなかったか?


いつ頃からなのか、真昼がわたしより唯流を優先すると、なぜか胸がちくりと痛んで……


ずっとその痛みを無視していなかっただろうか。


ほんとは、唯流がわたしに言ったように、真昼はわたしのだと唯流に言いたかった……………?


「………青?」


わたしは口をぱくぱくさせるだけで何も言えなかった。


周囲のざわめきが無感動に耳を通り過ぎてゆく。


「……でも、わたしは……」


ずっと凛太朗先輩が好きだったのだ。


先輩が好きで好きで、いちいち鏡が気になって、会える放課後が待ち遠しかった。


でも結局諦めたじゃないか、と心の中で誰かが囁く。


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