悪魔的に双子。
放課後、わたしは音楽室には向かわず真昼の教室にとんでいった。


ざわざわとしたクラスの中で、真昼は数人の男子たちと騒いでいる。


その中の一人が、ドアの前で入ろうにも入れずおどおどしているわたしに気づいたのか、真昼をつついてわたしの方を示した。


驚いたような顔をした真昼がひやかす声に見送られながらわたしのところにやってくる。


「どうしたの?」


……どうしたの?……どうしたんだろ。


自分でもよくわからない。


ただ、どうしようもなく真昼に会いたくて、目の前にいる今、すごく心がほっとしている。


「えっと、ね…」


言葉を探しながら真昼の学ランのそでを掴む。


真昼はしばらくわたしが言うのを待っていたけど、何を思ったのか振りかえって、


「ねぇ、僕今日部活休むって、先生に言っといてっ」


と男子の集団に叫んだ。


そうか、あれ、全員バスケ部。


「休むの?」


真昼がこくりとうなづく。


「なんで?」


真昼をうーん、と難しい顔をして唸ったあと、阿呆みたいに清々しい顔で、


「なんとなく」


と笑った。


小さい声でごめん、とつぶやくと、えー、なんで?とおかしそうに微笑う。


そりゃ、真昼が部活休むのはわたしのせいだから。


わたしの様子がおかしいから、真昼なりに心配しているのだ。


それが分かっているのに止めないわたしもわたしだけど。


「さ、帰ろ」


握られた手を、ぎゅっと握り返した。


「うん」


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