悪魔的に双子。
「何か泣きたい気分になっただけだよ」


「うそ」


有志は驚くほどさっきのわたしにそっくりな口調で言った。


「三年の先輩たちに、何か言われたんじゃないの?」


「当たらずも遠からずです」


実際にあの先輩たちはわたしになんか言ってたわけじゃないし。


性格ひねくれた下級生の悪口言ってただけ。


「何言われたの」


珍しくつっこんでくる有志にわたしは目を開いた。


双子の妹相手だろうが遠慮っぽいのが有志の常なのだが。


わたしは小さく息をはいて、


「あの先輩たち、唯流の悪口言ってて、まぁ、一応妹だし、なんか腹立っちゃって」


それだけ言って有志をちらりと見た。


有志の横顔には、複雑で、どこか皮肉っぽい表情が浮かんでいた。


有志は、唯流のことに関しては微妙な反応を見せる。


過去にされてきたことを考えれば、普段の接し方はとても優しいし、家の中では家族として、最近はうまくやってると思う。


でも、唯流のことになると時々、有志の瞳には冷たい色が浮かんだ。


何かをおさえているような、怖い色だ。
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