悪魔的に双子。
「別に大丈夫だと思うけどなぁ。クラスの子たちもすんごい剣幕なのはほんの数人であとは好奇心って感じだったし。」


……でもやっぱりすごい剣幕なのはいるのね。


「いいの、気分的な問題。今教室から出たら、ストレスで吐くかも。」


「おーげさだなぁ」


有志がおかしそうに笑う。


わたしはちょっとむっとして、


「朝から変な目とか敵意とか向けられるんだもん、教室の中でもそうなのに、外出たらどんな人に会うかわかんないしっどうせ有志にはひとごとだろうけどっ」


と拗ねてみた。


「ひ、他人事だなんて思ってないよっ」


有志が慌てて弁解する。


「どうだか」


「や、ほんとに思ってない」


「何?珍しく喧嘩ですかな?」


蓮がわたしたちの中に割ってはいった。


瞳に好奇心をきらめかせて。


「「別にそういうつもりは」」


「おっ、久しぶりの双子ハモり」


「ほんと、久しぶりだな」


おひょひょー、とか訳のわからんことを口ずさみ出す蓮に田城が相槌をうつ。


わたしと有志は思わず顔を見合わせた。


「ねぇ、有志、前から思ってはいたんだけど、田城くんってちょっぴり天然入ってたりする?」


「うん、成海は天然だよ」


「有志に言われるなんて相当だね」


「……どうゆう意味」


いつの間にか話はくだらない方向に向いていて、わたしたちは真昼のファンどうのこうのの話を忘れて仲良く昼ごはんを食した。


ちょうど有志がたまごを喉につまらせて田城に背中をさすってもらっていた時、最近妙に良く聞く苦手な声がドアの方から聞こえてきた。


「やっと見つけた!有くん、部活のことで連絡があるんだけ……ど」


「ほえ…龍?」


なんとかたまごを胃に流し込んだ有志が振り返って首をかしげた。


「どしたんだろ」


そうつぶやいて有志は新田の方へ歩み寄る。


わたしも新田の顔を見て首を傾げた。


その表情は少し距離のある窓際のここからでもわかるほどこわばっていた。


その視線は一点に注がれている。


わたしは視線のさきに目をやってもう一度首を傾げた。


そこには新田の叫び声にまったくの反応も示さなかった田城がいた。


昨日の夜の唯流さながら、一人もくもくと弁当を食い続けている。
再び新田に目をやると、すっかり元の顔で有志と話している。


耳元できらりとピアスが光っていた。
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