悪魔的に双子。
「先輩には、わたしが双子だってこと言ってませんでしたっけ?」


「うんっ、知らなかった。てゆか、やっぱり双子なんだ」


先輩は心底楽しそうに有志を見つめながら、元気いっぱい言った。


そして、ふいにこっちを見ると、申し訳なさそうに苦笑う。


「ごめんね……いっつも青ちゃんには俺の話しばっかり聞いてもらってて。おんなじ学校にいる兄弟のことも知らなかったなんて」


わたしはブンブン首を横にふった。


「そんなことないですよっ、先輩はわたしの悩みとか聞いてくれるし、わたしが落ちこんでたら、気づいてくれるしっ」


先輩は照れたように笑って言った。


「でも、俺が愚痴聞いてもらってることのが明らかに多いよ」


……それは否定できませんが。


あえてスルーして、わたしは先輩に尋ねた。


「どうしてここにいらっしゃるんですか?」


「青ちゃん探してたの」


そんなに男装したわたしもどきが珍しいのか、先輩は有志から目を離さずに言った。


「え?」


わたしは予想外の言葉に、思わず聞き返していた。


「青ちゃん遅いなぁと思って探してたんだ。来ない日とかは前の日に言うのに、昨日は何も言ってなかったし。もしかしたら事件にでも巻き込まれてるんじゃないかと思って学校中周ってたんだ。でここに来たら……」


先輩はわたしの方を見てにかっと笑った。


「青ちゃんが男バスに入部してた」


…………



「凛太朗先輩」


「なぁに」


「何でもないです」


えー、何それ、と先輩が口をとがらせる。


ツッコミどころはいくつかあったが、先輩がわたしを探してくれたことが嬉しかった。


口元が緩んで仕方がない。


わたしは誤魔化すようにほっぺを抑えた。


「?青ちゃん、耳赤くなってるけど、大丈夫?」


なんにも知らない凛太朗先輩が、わたしの片耳にそっと触れる。


触れられたところにさらに熱がたまって、わたしは先輩から少し離れた。

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