悪魔的に双子。
「……ねぇ、真昼」


ほっぺの熱も引いてきた時、わたしは真昼に尋ねた。


「何でここにいんの」


「それは……何となく」


先刻のわたし同様、実に曖昧な返事をかえしてきた。


長いまつげをせわしなくしばたたかせる。


「何でわたしがここにいるって分かったの?」


「青がいるから来たわけじゃないかもよ」


「……嘘つき」


真昼はチラリとわたしを見て、自分のふわふわした髪をくしゃっとつかんだ。


そして諦めたようにため息をつく。


「有くんが前に龍と話してるの聞いたんだよ。青と近所のゴミ捨て場で毎度待ち合わせしてるって」


わたしにあきれたような目を向けてくる。


「もっと別のところで待ち合わせすればいいのに」


「うるさい」


ぴしゃりと返した。


確かに待ち合わせ場所がゴミ捨て場とは、あんまり聞こえがよくないけれど、うまいこと車を避けれるし、ここだと生徒があんまり通らないから、わたしにとっては最適の場所なのだ。


うるさいっ、と一喝した後、わたしははたと首をかしげた。


「ねぇ、真昼」


「何?」


真昼の顔を覗きこんで尋ねた。


「わざわざわたしのいる近所のゴミ捨て場探しに学校の周り一周してきたの?」


真昼は心なしか頬を赤らめて、


「すぐに見つかったよ」


と言ってうつむいた。


「変なの。凛太朗先輩がわたしの彼氏かどうかなんて、気になるなら家に帰って聞けばいいのに」


「それはっ」


わたしの言葉をさえぎるようにして真昼が声を上げた。


「ぎ、義務なんだよ」


「…はい?」


「だからっ、姉が変な奴に引っかかってないか見張っとくのは弟の義務なのっ」


……『姉が変な奴に引っかかってないか見張っとく義務』?


今度、市の条例でも調べてみるか。


わたしがそんなことを思っている間にも真昼は地面を睨みつけながら続ける。


「だから、一刻も早く近況を把握しておくのが……」


語尾がしりすぼみになってよく聞こえなかった。


でもとりあえず、


「心配してくれてたんだ」


「あー、うん、ちょっと違うけど……」


はっきりしない口調で真昼がごにょごにょと返事をする。


『ちょっと違うけど』って言葉が気になるけど、恥ずかしがっているのだろうと思うことにして、


凛太朗先輩が変な奴に見えたんだろうかと複雑な感情を抱きながらも心の隅に押しやって、


「ありがと」


と真昼に笑いかけた。


「…ぅん」


ほとんど聞き取れない声で真昼が返事をした。


白い肌が街灯に照らされて、赤くなった頬がよく見えた。
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