悪魔的に双子。
帰り道は比較的和やかに時間が流れて安心した。


バスケ部にいる時みたいなツンケンした空気醸し出してもらったら、こっちはたまらない。


真昼と有志が笑いあってるところを、ものすごく久しぶりに見た気がする。


ちょっぴり楽しい気分で家に帰ってきたはずなのだが、食卓のそれぞれの椅子に座って晩ご飯を食べている今、気まずい空気が漂っている。


さっきから唯流が不機嫌なのだ。


三人一緒に帰ってきて、唯流だけ仲間はずれだと実に分かりやすく拗ねている。


真昼がなだめていたが、そっぽを向いて聞こうとしない。


めんどくさいお姫様である。


ピンク色の唇を尖らせて、外野から見ればとても可愛らしいが、関わりがあるぶんにはホントにめんどくさい。


「なぁ、唯流。どうしたんだ。」


椅子には座ってるくせにものすごい顔してごはんに手をつけない唯流に、見兼ねたらしいお父さんが声をかけた。


「……唯流だけ、仲間はずれにした」


少し間のあいた後、唯流がぼそりと答えた。


「仲間はずれ⁉」


お父さんがギョッとして素っ頓狂な声をあげる。


唯流溺愛のお父さんの脳内には、仲間はずれにされて泣いてる唯流の姿がまざまざと浮かんだらしい。


「が、学校の友達か、クラスの子たちか⁉」


「違う。真昼と青と……有志」


「……へ?」


予想外の答えだったらしくお父さんが変な顔をした。


そりゃ、中2にもなってきょうだい間で仲間はずれも何もないだろう。


小2の頃とは違うんだから。


唯流はぶすっくれた顔のまま続けた。


「唯流は一人で家に帰ったのに、三人で一緒に帰ってきた。仲間はずれ、ひどい」


わたしはため息をつきかけて慌てて引っ込めた。


そして冷静につっこんでみた。


「唯流、わたしたちが下校する時間にはとっくの昔に家帰ってるでしょ。帰宅部なんだから。」


「青だって帰宅部だもん。でも三人で待ち合わせして一緒に帰ってきたんでしょ?」


唯流が真昼と同じ色素の薄い瞳で睨んでくる。


「そういえば……青ちゃん、帰宅部なのにいつも有志くんと一緒に帰ってくるわね。」


不毛で間抜けな言い争いをおかしそうに傍観していたお母さんが不意に声をあげた。


わたしはぎくりと身をすくませた。


「青、お前放課後なにしてるんだ?」


可愛い唯流の滅裂っぷりに目をパチクリさせていたお父さんが急に真剣な顔になってわたしに尋ねた。


「何って……いろいろ」


好きな人と一緒にいます、とは言えない。


かと言ってとっさにウソつけるほど器用じゃない。


わたしはいきなり変わった話題についていけず頭が白くなった。


「もう子どもじゃないんだから、有志や真昼を待ってわざわざ一緒に帰ってくることはないだろう。その辺でたむろってるだけなら、さっさと帰ってきて勉強しなさい。二年になったんだし、そろそろ受験を視野に入れる時期だ。」


お父さんの説教モード突入に、原因を作った唯流をチラリと睨みつけた。


唯流はわたしが小言を言われていることで機嫌が良くなったのか、白飯をぱくついている。



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