悪魔的に双子。
昇降口に入ると、当然だけどシーンとしていて、これから授業中の教室に入っていかなきゃいけないのかと今更ながらにげんなりした。


いやでも注目をあびてしまうだろう。


わたしは普段注目されるようなたちではないうえに人の目を集めることが恐ろしく苦手だ。


現在真昼のせいでそうそう目立たない存在ではいられないけれど。


「はぁーーっ」


とため息をつくと、


「でっかいため息、ここまで聴こえるよ」


とあきれた真昼の声が幾つか離れた下駄箱の方から聞こえた。


「……だって、しんどいんだも……」


言いかけて、わたしははたと、床に置いた自分の上履きの中をのぞいた。


何か普通ではないものが見える。


ぬらっと光って時々思い出したように動きやがるアレが……


「きゃぁあああ‼」


「青⁉」


わたしはその場にへたへたと座り込んだ。


女子が発したとは思えない絶叫に反応して、真昼がわたしのところに駆け寄ってくるのがかろうじて分かった。


「青?どうしたの?大丈夫⁉」


真昼が切羽詰まったような声でわたしのとなりに膝を曲げる。


「ナッ、な…」


「な?」


「ナメクジがわたしの上履きの中に…」


わたしは自分の顔を手で覆って言った。


「生息しておりました……」


「……」


真昼がほっと息をはいたのが聞こえた。


「びっくりした。何だよ、ナメクジって」


からかう口調のもどった真昼をわたしはキッと睨んだ。


「わたしがナメクジ苦手なの、真昼のせいなのにっ…」


「あー、うん…分かってる」


真昼は気まずそうな顔をして俯いた。






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