OCEAN SONG
2day

自覚


「ただいま」

「おかえり」

ガチャッとドアを飽けると、
ひょっこりとおばあちゃんが
顔を覗かせる。

「早くおいで。ココアを作ってあげよう」

「ホント?ありがとう」

私は靴を脱ぎ捨て、
バタバタと居間に入っていく。

おばあちゃんはささっと準備をして、
あっという間にココアを作ると
私の元にココアの入ったコップを置いた。

「さっきの男の子は、
美波のいい人かい?」

唐突に聞かれ、私は
ココアを吹き出しそうになる。

「やだ、おばあちゃん。
ただのクラスメイトだよ」

私は慌てて首を横に振る。

「そうかい?あたしは、あの子と
美波はお似合いだと思うけどねえ」

「もう、おばあちゃんったら…」

私は小さく呟き、ココアを啜った。

それから、おばあちゃんにこう言った。

「おばあちゃん、好きって何?」

「どうしたんだい、急に」

「ただ気になっただけだよ。
人を好くってどういうこと?
好きって何?」

「そうだねえ…」

おばあちゃんは、遠い昔を
思い出すように、じっと一点を見つめていた。

見つめる先は、
仏間にあるおじいちゃんの仏壇。

若い頃のおじいちゃんの遺影は、
屈託のない微笑みを見せて
こちらを見つめている。

「自分が好きになった人を
愛し続けることかねえ」

「ねえ、そうでしょう。拓夫さん」

おばあちゃんは、おじいちゃんの名前を
呼んで、おじいちゃんの遺影に向かって微笑んだ。

おじいちゃんの遺影は
何も返事をしないのに。
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