OCEAN SONG
「これだけでごめんな」
頭をポリポリと掻いて
申し訳なさそうに言う。
「ううん。これで充分だよ。ありがとう」
私はニコッと笑う。
内野くんは照れたように笑い、
「ん」と小さく呟いた。
「それじゃ、これから用があるから」
「用って?」
「店番だよ。俺ん家、和菓子屋やってるから」
ああ、いつだか覚えていないが
前にそんなことを言っていたような気がする。
「そっか。店番、頑張ってね」
「おう。今度、店に来いよ。
美味い大福、奢るよ。じゃあな!」
そう言って自転車に跨がり、
ペダルを漕いで足早に去っていった。
私は掌に乗っかっている
チロルチョコをひとつ摘まみ、
封を開けて口に放り込んだ。
薄いビニール製の紙を見ると
いちご味のチョコを口にしたらしい。
私は口の中に広がるいちご味の
チロルチョコを口で弄びながら
彼の想いにふけっていた。