お嬢様になりました。《番外編》
放課後三人でやってきたのは、老舗デパート。


高級感漂うこの雰囲気は、何度来ても慣れなくて、ソワソワしてしまう。



「お気に入りの店はございますか?」

「ううん、特にないかな」

「でしたら私のお勧めのお店へ行っても宜しいですか?」

「うん」



こんな老舗デパートの中にお勧めのお店があるなんて……流石生粋のお嬢様。


未だに自然と値札に目がいってしまう私は、お嬢様の“お”の字すらないかもしれない。


お嬢様になれる気がしない。



「あら、このお店が好きなの?」

「えぇ、昔から好きでよくお世話になってますの」

「奇遇ね。 私もこのお店は好きなお店の一つなの」

「まぁ、そうでしたの? でしたらエルザさんも楽しくお買い物ができますわね」



話についていけない。


お店に並べられている商品は、ドレスやスーツ、ワンピース……どの洋服屋さんにも置かれている品物ばかり。


でも値段は思わず二度見してしまう程高額だ。


素材がいいんだろうけど、ブランド力って恐ろしい。


いつも華と買い物に行く時は、もっと賑やかで、人で溢れかえってるっていうのに、ここは穏やかなBGMに、スーツをお洒落に着こなしたお姉さんがたっている。


それも落ち着かない理由の一つだ。





< 5 / 83 >

この作品をシェア

pagetop