《改稿中》V系霊媒師「咲邪」†SAKUYA†《改稿中》
或る夜、首都近郊のベッドタウン。空は雲に覆われていて、丁度満月辺りだろう月が不気味に雲を光らせている。
風も無く、滞った空気はジトジトと肌にまとわり着き、盛りの付いた猫の声だけが喧しく響いていた。
ヒュッ
「おわっ! なんだ?」
マンションの一室。扉を開けてトイレに入ろうとした前田は、その扉ごと何かに引っ張られて思わず声を上げていた。
「おい誰だ誰だぁ? 今悪戯したのは……」
だらしなく着崩したパジャマ姿で、ボサボサの頭を掻き毟ムシりながら徐オモムロに扉の裏へ回って問いかけてみるが、そこには誰も居なかった。
「ん? あれ?」
その先の万年床が敷かれた寝室も、いくら小言を言おうが片付かない子供部屋も、果ては玄関のドアを開けて家の外まで覗いてみたが、そのどこにも人影は見当たらなかった。
「なぁに? お父さん、どうしたの?」
そう明るく問い掛けられて前田は返答に困っていた。その時、家族は全員リビングに居て、誰もトイレには近付いていないと言う。
その不可解な出来事が有ってから、前田の周りで不穏な何かが動き始めていた。
──────
「いや気味悪いのなんのって! 俺は今迄そんな経験一度もした事無いからさぁ」
運送会社でデリバリードライバーをしている前田は、午前ルートの積込みがひと段落付いたので、首に掛けたタオルで顔を拭いながら、同僚に昨夜の出来事を話していた。
「それって、座敷わらしじゃないのか? そうならお前、これからジャカスカ稼げるようになるぞ。恵まれない俺に奢ってくれ!」
同僚は配送センターの奥に有る、古びた自動販売機を指差して言う。
「俺はインディゴブルーマウンテンで。宜しくな!」
風も無く、滞った空気はジトジトと肌にまとわり着き、盛りの付いた猫の声だけが喧しく響いていた。
ヒュッ
「おわっ! なんだ?」
マンションの一室。扉を開けてトイレに入ろうとした前田は、その扉ごと何かに引っ張られて思わず声を上げていた。
「おい誰だ誰だぁ? 今悪戯したのは……」
だらしなく着崩したパジャマ姿で、ボサボサの頭を掻き毟ムシりながら徐オモムロに扉の裏へ回って問いかけてみるが、そこには誰も居なかった。
「ん? あれ?」
その先の万年床が敷かれた寝室も、いくら小言を言おうが片付かない子供部屋も、果ては玄関のドアを開けて家の外まで覗いてみたが、そのどこにも人影は見当たらなかった。
「なぁに? お父さん、どうしたの?」
そう明るく問い掛けられて前田は返答に困っていた。その時、家族は全員リビングに居て、誰もトイレには近付いていないと言う。
その不可解な出来事が有ってから、前田の周りで不穏な何かが動き始めていた。
──────
「いや気味悪いのなんのって! 俺は今迄そんな経験一度もした事無いからさぁ」
運送会社でデリバリードライバーをしている前田は、午前ルートの積込みがひと段落付いたので、首に掛けたタオルで顔を拭いながら、同僚に昨夜の出来事を話していた。
「それって、座敷わらしじゃないのか? そうならお前、これからジャカスカ稼げるようになるぞ。恵まれない俺に奢ってくれ!」
同僚は配送センターの奥に有る、古びた自動販売機を指差して言う。
「俺はインディゴブルーマウンテンで。宜しくな!」