《改稿中》V系霊媒師「咲邪」†SAKUYA†《改稿中》
 咲邪は冷たくそう言い捨てるなり真言を唱える。


「……くさあまんだ…………かろしゃあ………喝!」


 するとテディベアに電流が走って激しく痙攣すると、栗毛の熊がすっくと立ち上がった。

 キョロキョロと周りを見回していた熊は前田を見付けると、勢い良く飛び掛かる。


「! マズイ!」


「斬汰、浄拳を!」


 守護霊以外で霊を攻撃出来るのは、封印師しか居ない。咲邪達の間に緊張が走った。


「咲邪、大丈夫だ。あれを見るんだ」


 前に出ようとした咲邪を制して斬汰は言うと、顎で前田を見るよう促す。

そこには父と幼い息子のほのぼのとした会話が有った。


「お父さんが買ってきてくれたあのデザート、とっても美味しかった! でもキウイは酸っぱかったなぁ」


「ああ、ごめんごめん」


「僕のお寺の友達のお父さんお母さんは、最初の頃はやって来るけどその内来なくなっちゃうんだ……」


 テディベアは甘えて、前田の胸に顔をスリスリとこすり付けている。


「そうなのか、ミツキ」


 彼は目を細めて水子の名前を呼んで、頭を撫でてやっている。


「うん、でもお父さんはずっと来てくれた。たまにだけどね! そうして今日は、こうして抱っこもしてくれてる。嬉しいなぁ!」


 栗色の巻き毛がクルクルと可愛い熊は、顔を上げ前田を見つめる。そしてその感触を確かめるかのようにまた、懐へ頬を擦り付けた。


「お父さんの匂い、お日様みたいだ」


「ミツキ。ちょくちょく行ってやれなくてごめんな」


 涙声になった前田は、その涙を見せないようにしっかりと胸にテディベアを抱き締めた。


「ううん。僕お父さんの事、大好きだもん」


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