スイート・プロポーズ
「じゃあ聞くが、俺が好きだと言って、当時の小宮なら何て答える?」
「・・・・・・ごめんなさい」
多分、即答だろう。
仕事に慣れることや、いろんな事で頭がいっぱいで、恋愛する余裕はなかった。
「告白する機会はあったが、いつでもいいというわけじゃない。生憎と、玉砕の覚悟はないんでな」
夏目が、遠い目をして語る。
いつかは冷めるかもしれない。
一時の感情に身を任せ、浅い“恋”に身を投じるよりも、熟考の果てに深い“愛”に溺れたい。
夏目の眼差しに、円花はつい視線を逸らす。
「小宮。きちんと考えて、答えを出してくれ」
「・・・・・・はい」
円花は席を立ち、小さく頭を下げる。
「あの」
扉の前、円花は躊躇いがちに口を開いた。