スイート・プロポーズ
「夏は暑くて嫌いなのよね」
ペットボトルのフタを開けて、美琴は間近に迫る夏の到来に不満を漏らす。
「ん」
「何?」
円花は思い出したように、あるものを取り出す。
それは、沖縄出張でもらった、不二 薫の名刺。
渡すべきかどうか悩んでいたが、一応、美琴に見せてみることにした。
美琴は名刺を見つめた後、興味なさげに目を逸らす。
「聞かないの? どうして持ってるのか」
「・・・・・・沖縄で会った?」
美琴の言葉に、円花は頷く。
「仕事で沖縄に行くとか言ってたから」
確信を持っていたわけではないが、可能性の一つとして言ってみた。
まさか本当に会っていたとは、偶然とは恐ろしい。
「いる?」
「・・・・・・いらない。持ってるもの」