スイート・プロポーズ

「部長・・・・・・」


カップは落とさなかったが、驚きは隠せなかった。

そんな円花の心境を知ってか知らずか、夏目は微笑んでいる。


「今夜、空いてるか?」

「あ、はい」


反射的に返事をする円花の頭を、夏目がポンッ、と軽く叩く。


「じゃあ、飲みに行こう」

「わかりました」


給湯室を出ていこうとした夏目が、思い出したように立ち止まり、振り返った。


「念のため言っておくが、ふたりで、だからな」

「・・・・・・はい」


つまりはデートだと。

夏目は平然とした顔で、給湯室を出ていく。


(デート・・・・・・デートか)


なんだか、久しぶりに聞く単語だ。

倉本は別として、男性とふたりきりで飲むことはある。


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