スイート・プロポーズ
Bygone...心
「美琴って、髪切らないの?」
思い出すきっかけは、友人―――小宮 円花のその一言だった。
高校の入学式。
「髪キレイだね」
それがアイツとの初対面で、アイツの第一声だった。
誰にでも優しくて、誰にでも人気がある。
良くも悪くも、アイツ―――不二 薫はそういう男だった。
「切らないわけじゃないわよ。ちょっと前に、美容院行ったし」
自分の指先で髪を遊びながら、美琴はつまらなそうに答える。
黒い自分の髪を改めて見てみれば、確かに切った方がいいかもしれない。
高校生の頃、何度か染めてみないか? と言われたこともあったが、興味がなかった。
(アイツも嫌がったし・・・・・・)
そう、不二 薫は、この髪を気に入っていた。