スイート・プロポーズ

自分が欲深い人間になったみたいで、夏目から目を逸らしてしまう。


「置いてかないでよ! あ、部長……」


額にうっすらと汗を浮かべて、美琴が追いついた。


「こ、こんにちは」

「こんにちは。総務部の月島さん、だったよね」

「はい。……私、先に戻ってようか?」


夏目にわからないように耳打ちすれば、円花は小さく首を振る。


「失礼します」

「あ、円花。また、置いてくし」

「…………」


エレベーターのボタンを押して、円花は振り返りたい気持ちを抑える。

今、自分はどんな顔で夏目を見ていたのだろう。

いつもの自分ならば、いい。

いくらでも取り繕える。

けど今は、そんな余裕がない。


傍にいたら、触れたいと思う。


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