スイート・プロポーズ

夏は終わりに近づいている。
とは言え、暑さは未だに和らぐ気配を見せない。


「今日も暑いですね」

「そうね」


夏生まれだが、円花は夏が嫌いだ。暑いし、汗は出るし、暑いし。
毎年思う。社会人にも夏休みがあればなぁ、と。


「私、何か冷たいもの買ってきます。小宮さんも、買ってきましょうか？」

「そうね……。一緒に行くわ」


こう暑いと、仕事の能率が上がらない。気分転換も兼ねて、波奈と一緒に自販機へ行くことにした。


「何にしようかな、っと」


自販機にお金を入れてから、波奈は何を買おうか悩んでいる。オレンジジュースに決めたかと思えば、隣の炭酸に目移りしている。


「あ、お金戻って来ちゃった。すみません」

「気にしないで」


微笑ましい光景だ。
波奈はもう一度お金を入れて、今度は迷わず炭酸を選ぶ。


「私も炭酸にしようかな」

「あんまり飲まないんですけど、たまに飲みたくなるんですよね」


冷たいペットボトルが、気持ちいい。飲まなくても、これだけで十分癒される。


「仕事に戻りたくないわ」