スイート・プロポーズ
そんなこと、言えるはずがない。
夏目と付き合う際、関係を秘密にしたいと言ったのは円花自身なのだ。
それなのに、言い出しっぺがその決まりを反故にするわけにはいかない。


「じゃあ、それとな〜く聞いてみたら?」

「それとな〜く?」


それならまぁ、いい?
いいのかな?

でもやっぱり、気にしすぎなのかも。
そう思わなくもない。




ーーーー……。


うららかな午後、円花は会社近くのカフェにいた。注文したアイスティーと、新メニューの赤い文字に惹かれて頼んでしまったマンゴーパフェ、目の前に置かれている。


「美味しいですね」


そしてマンゴーパフェの先、つまりは向かい合った席に座るのは、イチゴパフェに舌鼓を打つ波奈。
今日は、美容雑誌の編集者と打ち合わせをして来た。予定よりも早く打ち合わせが終わったので、その帰り、会社近くのカフェでお茶にすることにしたわけだ。


「今井さん、いくつだったっけ?」

「23になります。どうかしましたか?」

「ううん、別に。彼氏とかいるのかなぁ、と思って」


円花は、7月に誕生日を迎えたので26歳。
まだまだ働けるが、人によっては結婚を意識するお年頃。

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