スイート・プロポーズ

「本当ですか? どんな人です?」

「う〜ん……嬉しそうに笑う人、かな」


上司と部下。
そんな関係で居続ければ、きっと知りもしなかった。夏目が、自分を見るたびに向ける笑顔が、嬉しそうだということに。
冷たい人かと思っていたのに、触れてみれば暖かいことに。


「素敵ですね。結婚の予定とかは?」

「まだ1年も経ってないのに、そんな話にはならないわ」


円花も、今はまだ仕事を頑張りたい。結婚を意識しても良い頃だが、昨今は晩婚化も進んでいるという。焦る必要はあるまい。
多分。きっと。うん、恐らく。


「そうですか。小宮さんの花嫁姿、絶対に綺麗ですよね」

「……ありがとう」


そう言われると、悪い気はしない。


「そう言えば、夏目部長のある噂、知ってます?」

「噂?」


アイスティーを飲む手を止め、円花は耳を傾ける。


「海外転勤の話が出てるそうですよ」

「………………」

「小宮さん? 聴いてます?」


波奈が、何度も円花の名前を呼ぶ。

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