スイート・プロポーズ
支度を終え、マンションの外へ出たのが3分前。
円花は悩んでいた。


(海外転勤……聞くべきか、聞かざるべきか)


正直、とても気になる。
でも、こうも思うのだ。海外転勤が本当ならば、夏目がそのうち話してくれるのではないだろうか、と。


「うん、決めた!」


詮索はしない。夏目が話さないのならば、きっとただの噂なのだ。
そう思うことにした。


「何を決めたんだ?」

「うひゃあ!」


我ながら、可愛くもなんともない声だ。口元を押さえつつ、そろそろと視線を上げる。


「こ、こんにちは」

「こんにちは。驚かせてごめん」


そう言って、夏目は笑う。
その笑顔を見ると、円花もつい笑顔になってしまう。緩む頬を手で押さえつつ、円花は気を引き締める。


「お休みの日なのにに、わざわざ付き合ってもらってすみません」

「そういう時は、ありがとう、って言うんじゃないのか?」


夏目はまた笑って、車のドアを開けてくれる。
こういうちょっとした気遣いをさりげなく出来るのは、大人の男性という感じがする。

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