スイート・プロポーズ
本当に遠慮なしに買ってしまった。普段なら5キロしか買わないお米も、10キロ買った。油に醤油、柔軟剤の詰め替えも2つ買ったし、シャンプーなども買っておいた。
何度か夏目を気にして、カゴの中身を減らそうと思ったのだが、夏目本人が構わないと言ってくれたのだ。
だから、その好意に甘えることにした。

(……何も言ってこない)

帰りの車内で、円花は沈黙を貫いていた。
それは、夏目が海外転勤について話してくれるかもしれない、と思ったから。
でも未だに、夏目は何も言ってこない。
つまり、海外転勤はただの噂だった、と言うことだろうか?

「…………部長、私に話したいこととかありませんか?」

夏目が話してくれるまで、沈黙を貫くと決めたのに。
円花は自分が思っていたよりも早く、沈黙に耐え切れなくなった。

「話したいこと? う〜ん……」

「なんでもいいですよ」

運転中の夏目を、ジッと見つめる。
どんな言葉が飛び出そうとも、覚悟はできてるーーつもりだ。

「そうだな……小宮は料理が得意なのか?」

「…………料理、ですか?」

前を向いたまま、夏目が頷く。予想していたのとは、あまりにも遠すぎる。

「前、ポーチドエッグを作ってくれただろ? 慣れてるように見えたから、もしかして料理好きなのかと思って」

「……嫌いじゃないです。外食だとお金もかかりますし、栄養面も気になるので」

とは言え、毎日作っているわけじゃない。時間と体力に余裕がある時のみだ。


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