スイート・プロポーズ
完成したパスタは、さっぱりとした味の和風テイスト。

「お口に合えばいいんですけど」

夏目の前に出せば、変な緊張が訪れる。

「ど、どうですか?」

一口食べた夏目に、恐る恐る問いかける。

「美味しいよ。やっぱり、料理上手だな」

「良かったです……」

安堵の息をつき、円花は箸を手に取る。自分でも変なこだわりだと思うのだが、和風のパスタの時は、どうしてもフォークじゃなくて箸を使う。

「梅が入ってるんだな」

「嫌いでしたか?」

「いや、好きだよ。夏はよく食べる」

作る前に、好き嫌いを聞いておけばよかった。
けれど、その心配は杞憂だったようだ。夏目はパスタを、1本残らず食べきってくれた。

「……小宮。少し、時間をもらってもいいか?」

皿を洗い終えたのと同時に、夏目が真面目な声で円花を呼ぶ。
急になんだろう?
円花は一抹の不安を胸に、テーブルを挟んだ夏目の前に腰を下ろす。

「なんですか、改まって」

「…………いつ話すべきか、ずっと悩んでいた。けど、いつか話さなきゃいけないなら、自分から話すべきだと思うんだ」

嫌な予感がする。立ち上がって、話を遮りたくなる。
でも、そんなこと出来るはずがない。
だから、黙って夏目の話を聞いていた。

「俺に、海外転勤の話が出てる」

< 235 / 294 >

この作品をシェア

pagetop