スイート・プロポーズ
噂は噂。
そう決めた矢先、夏目に告げられるとは。
円花は何を言うべきか、迷っていた。

『そうなんですか。じゃあ、お別れですね』

それとも。

『私、遠距離でも頑張ります』

それとも。

『行かないでください』

一体、どれが正しいのだろうか?
いや、もしかしたら正しい答えなんてないのかもしれない。

「……いつですか」

正しい答えが分からないまま、円花は思ったままを口にする。

「出発の話か?」

「違います。海外転勤の話が来たのは、いつですか?」

波奈から噂を聞いたのは、つい最近。
なら、海外転勤の話が来たのも最近だろうか?

「……今年の春、だ」

「……春?」

円花が視線を逸らす。
今、夏目は確かに【春】と言った。

「部長。どちらが先ですか?」

「どちら、って言うと?」

円花は不安げな目で、夏目を見つめる。

「海外転勤と、私に告白したのーーどちらが先ですか?」

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