スイート・プロポーズ
ーーーー……。

 休日を利用して、円花は夏目への誕生日プレゼントを買おうと思っていた。ネットで調べたりもしたが、ネクタイピンにしようかな、とある程度決めてきた。予算は実物を見てから。

「前々から思ってたけど、夏目部長ってセンス良いよね。モデルにでもなれそう」

「いいから選んでよ」

 ひとりでは決めきれないと思ったので、美琴も誘っておいた。
 だが、真剣な円花と違って、美琴は軽い気持ち。日頃、メンズブランドに来る事がないので、美琴は興味津々に店内を歩き回っていた。

「あんまり高いのは良くないわ」

 相手が喜ぶものを選ぶのは基本だが、気を遣わせるのもよくない。高すぎると、喜びが薄れてしまう。ほどほどがいいのだ。

「ねぇ、美琴。聞いてる?」

「聞いてるよ〜……うわ、このネクタイ高っ」

 手にしたネクタイの値札を見た瞬間、美琴がネクタイを慌てて棚へ戻す。

「美琴!」

「怒んないでよ。……ここ、夏目部長が愛用してるブランドなの?」

 怒鳴られるのはごめんだ。
 美琴は円花の側に戻ると、ネクタイピンを眺める。

「愛用かどうかは知らないけど、このブランドのスーツを着てるのを何度か見たことがあるわ」

 夏目は、全身をひとつのブランドで揃える事は少ない。必ずしも高いものを身につけているわけじゃないが、何故だか夏目が身につけていると高そうに見える。

「色は? 決めた?」

「黒とかが無難、かな。ゴールドは派手?」

 店員の男性が、ネクタイピンの入ったケースをいくつか取り出してくれる。

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