スイート・プロポーズ
 夏目のイメージでは、あまりカラフルな物は身につけない気がする。

「そういえばさ、渡すプレゼントによって意味が違うって知ってた?」

「ハンカチを渡すと、手切れーーつまり、もう会いたくないって言う意味があるのは知ってるわ」

 店員にお礼を言って、一旦その場から離れる。

「他にもあるじゃない。有名なところで言えば、リングやネックレスがあなたを縛りたい。ネクタイは、あなたに首ったけ。それと、ネクタイピンは……あ、思い出した。ネクタイピンは、あなたは私のもの」

「………………」

 それはなんともーー反応し難い。
 円花は何気なく手に取ったシャツを戻し、贈り物を変えようかと悩む。

「いいじゃない。あなたは私のもの、だって!」

 実に楽しげに笑う美琴にイラッとしたのは、隠しようのない事実だ。思わず叩いてやりたくなる。

「違うものにするわ」

「1番最初に選んだのがいいに決まってる。意味合いなんて、気にしなきゃいいのよ。ハンカチを渡したら“もう会いたくない”? そんなのこじつけみたいなもんでしょ」

「あんたのそう言うハッキリしたとこ、見習いたいわ」

 円花はやっぱり、ネクタイピンのコーナーに戻る。美琴の言う通り、最初に決めたものがいい。

「どれにしようかな……」

「機能性重視か、それともオシャレを追求するか」

 それとも、お高いものにしてしまうか、リーズナブルなものに決めるか。男性に贈るプレゼントを、こんなにも悩む日が来ようとは。

「ねぇ、プレゼントもいいけど、部長とちゃんと話したの?」

「……まだよ」

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