スイート・プロポーズ
 だが、円花は公表するつもりなどない。夏目と付き合っていると知れば、興味本位で聞いてくる者が絶対に出てくる。
 それに耐えられる自信はない。

「嫌がらせとかも、心配だし」

「あ〜、それはあるかも。女って、集団になるとやたら強気になるのよね」

 経験でもあるのだろうか?
 何故か、そんな風に思える口調だった。

「でもさ、2年も待つわけでしょ? 部長、結婚とか視野に入れてるかもね」

「…………」

 冗談交じりに言ったつもりだったのに、円花の動きがピタッと止まる。本気にした?

「もしかして、なんにも考えてなかったの?」

「だって、付き合って1年も経ってないのに、結婚とか……」

 早すぎる。ありえない。いろんなことをすっ飛ばしすぎてる。

「早いとか遅いとか、関係ないでしょ。一緒にいたい相手が見つかったのなら、それが結婚のタイミングよ」

「……美琴にはいないの? そういう相手」

 いつまでも、自分が話の中心にいるのは耐えられない。
 そろそろ、話題の中心を美琴に変えてもいい頃。

「いないわね」

 そう思ったのに、美琴はすんなりと否定する。
 しかし、円花は引き下がらない。

「不二さんは? 本気で嫌ってるわけじゃないんでしょ?」

「なんであいつが出てくるのよ」

「美琴の周囲で、1番可能性がある人よ」

 なんの可能性? と聞き返したそうだったが、ここで食いつけば円花の思う壺。美琴は無視することに決めたらしい。

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