スイート・プロポーズ
「そこまで好きな相手、ねぇ」
出世の道を切り捨ててまで、夏目は円花を選ぼうとした。
それを愚かだと思う自分もいれば、羨ましいと思う自分もいる。
と同時に、どうしてそこまで想えるのか、疑問でもある。
「きっかけとか、あるのか?」
「好きだと自覚した瞬間は覚えてる。でも、知らず恋に落ちた瞬間は多分……あの時、だな」
「あの時?」
「窓際の花だよ。じゃあ、仕事に戻る」
「ま、窓際? え? クイズか何かか? おい、優志!」
意味が出来ないままの史誓を放置して、夏目はさっさと専務室を出て行く。残された史誓は、その日1日、夏目が言っていた【窓際の花】について考えることになってしまうのだーー。
今日も残業せずに定時で帰ろうとする円花の視界に、他部署の女子社員が映り込んだ。凝視するのは失礼なので、横目で見る程度にしておいたが、新嶋 梨乃はしっかりと睨むように見ている。
と言うのも、女子社員は真っ直ぐ向かっているのだ。夏目の元へ。
「新嶋さん、そんなに見たら失礼よ」
「あの子、絶対部長に告白しますよ」
梨乃の顔が怖い。今にも女子社員に噛みつきそうな顔だ。
(私が付き合ってるって知ったら、この子……どうするのかしら?)
それを想像すると、ちょっと怖い。円花はスマホを手に取り、チラッと夏目を見てみる。女子社員は頬を染め、夏目を外へ誘っているようだ。
さすがに、ここで告白する勇気はないだろう。夏目は真顔で、女子社員と出て行く。
「気になりません? 覗きに行きます?」
「い、行かないわよ」
梨乃は本気のようだが、円花はそんなことしたくない。覗いているのがバレたら、羞恥で死んでしまうかもしれない。
出世の道を切り捨ててまで、夏目は円花を選ぼうとした。
それを愚かだと思う自分もいれば、羨ましいと思う自分もいる。
と同時に、どうしてそこまで想えるのか、疑問でもある。
「きっかけとか、あるのか?」
「好きだと自覚した瞬間は覚えてる。でも、知らず恋に落ちた瞬間は多分……あの時、だな」
「あの時?」
「窓際の花だよ。じゃあ、仕事に戻る」
「ま、窓際? え? クイズか何かか? おい、優志!」
意味が出来ないままの史誓を放置して、夏目はさっさと専務室を出て行く。残された史誓は、その日1日、夏目が言っていた【窓際の花】について考えることになってしまうのだーー。
今日も残業せずに定時で帰ろうとする円花の視界に、他部署の女子社員が映り込んだ。凝視するのは失礼なので、横目で見る程度にしておいたが、新嶋 梨乃はしっかりと睨むように見ている。
と言うのも、女子社員は真っ直ぐ向かっているのだ。夏目の元へ。
「新嶋さん、そんなに見たら失礼よ」
「あの子、絶対部長に告白しますよ」
梨乃の顔が怖い。今にも女子社員に噛みつきそうな顔だ。
(私が付き合ってるって知ったら、この子……どうするのかしら?)
それを想像すると、ちょっと怖い。円花はスマホを手に取り、チラッと夏目を見てみる。女子社員は頬を染め、夏目を外へ誘っているようだ。
さすがに、ここで告白する勇気はないだろう。夏目は真顔で、女子社員と出て行く。
「気になりません? 覗きに行きます?」
「い、行かないわよ」
梨乃は本気のようだが、円花はそんなことしたくない。覗いているのがバレたら、羞恥で死んでしまうかもしれない。