スイート・プロポーズ
(部長を信用してないみたいだし。…………)
円花はバッグに荷物を詰め込みながら、実感していた。夏目と過ごせる時間は、もう少ないのだと。
アメリカと日本。行こうと思えば、行けるだろう。永遠の別れではない。
だが、お互いに大人だ。任された仕事もあれば、互いを束縛することの愚かさも知っている。繋がるために1番重要なことは相手を信頼し、また相手も自分も信頼していると信じること。
「……あともう少し、なのね」
円花は窓の外を見る。季節は秋。夏目がアメリカへ経つのは、春が来る前。砂時計の砂はゆるやかに、けれども止まることなく落ち続けている。
「帰るわね」
未だ、梨乃はオフィスを出て行った夏目を気にしている。
そんな彼女に苦笑いを向けて、円花はオフィスを出て行く。エレベーターに乗ろうかと思ったが、今日はなんとなく、階段で帰ろうと思った。
カツン、カツンとわざとらしい音を立て、静寂を破りながら階段を降りる。
(……アメリカから帰ってきた後……)
不意に、思ってしまった。アメリカから夏目が帰って来た後の、自分達について。将来についての約束は、何もない。
でも、約束なんて無い方がいいのかもしれない。約束は、時にお互いを縛ってしまうから。
「あ」
階段を降りている途中、見えてしまった。踊り場にいる、夏目と女子社員を。遠目からでも分かる。女子社員は顔が真っ赤。告白の真っ最中だ。
円花は慌てて引き返す。
ここで自分が見つかったら、まるで覗きに来たみたいだ。実際は違ったとしても。
「……ふぅ」
物音ひとつ立てず、円花は階段から離れ、エレベーターの前にやって来た。
こんなことなら、はじめからエレベーターで下に行けばよかった。
「…………」
告白されていた場面を見ると、複雑な気持ちになる。大丈夫だろうと思う反面、ふと不安になる自分がいるのだ。
(アメリカでも、あるのかしら……)
円花はバッグに荷物を詰め込みながら、実感していた。夏目と過ごせる時間は、もう少ないのだと。
アメリカと日本。行こうと思えば、行けるだろう。永遠の別れではない。
だが、お互いに大人だ。任された仕事もあれば、互いを束縛することの愚かさも知っている。繋がるために1番重要なことは相手を信頼し、また相手も自分も信頼していると信じること。
「……あともう少し、なのね」
円花は窓の外を見る。季節は秋。夏目がアメリカへ経つのは、春が来る前。砂時計の砂はゆるやかに、けれども止まることなく落ち続けている。
「帰るわね」
未だ、梨乃はオフィスを出て行った夏目を気にしている。
そんな彼女に苦笑いを向けて、円花はオフィスを出て行く。エレベーターに乗ろうかと思ったが、今日はなんとなく、階段で帰ろうと思った。
カツン、カツンとわざとらしい音を立て、静寂を破りながら階段を降りる。
(……アメリカから帰ってきた後……)
不意に、思ってしまった。アメリカから夏目が帰って来た後の、自分達について。将来についての約束は、何もない。
でも、約束なんて無い方がいいのかもしれない。約束は、時にお互いを縛ってしまうから。
「あ」
階段を降りている途中、見えてしまった。踊り場にいる、夏目と女子社員を。遠目からでも分かる。女子社員は顔が真っ赤。告白の真っ最中だ。
円花は慌てて引き返す。
ここで自分が見つかったら、まるで覗きに来たみたいだ。実際は違ったとしても。
「……ふぅ」
物音ひとつ立てず、円花は階段から離れ、エレベーターの前にやって来た。
こんなことなら、はじめからエレベーターで下に行けばよかった。
「…………」
告白されていた場面を見ると、複雑な気持ちになる。大丈夫だろうと思う反面、ふと不安になる自分がいるのだ。
(アメリカでも、あるのかしら……)