スイート・プロポーズ
いつだったか、倉本とそんな話をしたのを思い出す。
「確かに、有意義だな。……指輪を、贈ろうと思ってた。俺を待っていてほしいから」
けど、買わなかった。指のサイズが分からなかったし、何よりも目に見える繋がりを求める自分が、情けなく思えたから。
「私、指輪なんか無くても、部長を……優志さんを待ってますよ」
「あぁ、そうだよな。だから、指輪を贈るのはもう少し待つことにするよ」
世界で1番ーーとは、恥ずかしくて言えないけれど、君が泣いてしまうくらいに素晴らしい指輪の贈り方を考える。
そのための2年だと思えば、耐えられると思う。
「あ、忘れるとこでした。コレ、どうぞ」
丁寧にラッピングした箱を、夏目に手渡す。昨日、人生ではじめて作った、手作りのバレンタインチョコだ。失敗作は、今朝の朝ご飯にした。
「ありがとう。……じゃあ、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
円花は笑顔で、夏目を見送る。大丈夫。泣かないと決めたし、泣いたらメークが崩れてしまう。
だから、絶対に夏目の前では泣かない。負けず嫌いで、強気な自分を前面に出す。
「…………っ」
やがて、夏目が見えなくなっていく。
きっと、夏目も円花は見えないだろう。
そうして、円花はようやく涙を我慢することをやめた。
「ん」
「……ありがと」
一緒について来てくれていた美琴が、ハンカチを差し出してくれる。気を使って、ずっと隠れていたのだ。
夏目は、美琴がいるなんて気づいてもいないだろう。
「あ〜あ、ぐちゃぐちゃじゃない」
声を抑えて泣く円花の顔を見て、美琴が笑う。
しっかりと施したメークが、台無しだ。
「確かに、有意義だな。……指輪を、贈ろうと思ってた。俺を待っていてほしいから」
けど、買わなかった。指のサイズが分からなかったし、何よりも目に見える繋がりを求める自分が、情けなく思えたから。
「私、指輪なんか無くても、部長を……優志さんを待ってますよ」
「あぁ、そうだよな。だから、指輪を贈るのはもう少し待つことにするよ」
世界で1番ーーとは、恥ずかしくて言えないけれど、君が泣いてしまうくらいに素晴らしい指輪の贈り方を考える。
そのための2年だと思えば、耐えられると思う。
「あ、忘れるとこでした。コレ、どうぞ」
丁寧にラッピングした箱を、夏目に手渡す。昨日、人生ではじめて作った、手作りのバレンタインチョコだ。失敗作は、今朝の朝ご飯にした。
「ありがとう。……じゃあ、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
円花は笑顔で、夏目を見送る。大丈夫。泣かないと決めたし、泣いたらメークが崩れてしまう。
だから、絶対に夏目の前では泣かない。負けず嫌いで、強気な自分を前面に出す。
「…………っ」
やがて、夏目が見えなくなっていく。
きっと、夏目も円花は見えないだろう。
そうして、円花はようやく涙を我慢することをやめた。
「ん」
「……ありがと」
一緒について来てくれていた美琴が、ハンカチを差し出してくれる。気を使って、ずっと隠れていたのだ。
夏目は、美琴がいるなんて気づいてもいないだろう。
「あ〜あ、ぐちゃぐちゃじゃない」
声を抑えて泣く円花の顔を見て、美琴が笑う。
しっかりと施したメークが、台無しだ。