スイート・プロポーズ
「おはよう」
自分のデスクに鞄を置き、真っ直ぐ給湯室に向かう夏目。
「ん」
「あ、ありがとうございます」
湯気が揺らめくコーヒーが注がれたマグカップを受け取り、小さく頭を下げる。
これも、ある種の日課だ。
今日は夏目がコーヒーを入れたが、夏目が先に出社し、後から円花が来た場合は円花がコーヒーを入れる―――という暗黙のルールみたいなものが出来上がっていた。
「・・・・・・熱」
舌を火傷しないよう気をつけながら、コーヒーを一口飲む。
夏目は自分のデスクで、パソコンを開く。
お互い、会話はない。
「・・・・・・」
円花は本に視線を戻し、物語に集中する。
響くのは秒針の音や、タイピングの音。
(あ、なんか読んでる)