スイート・プロポーズ
唇を手で隠し、真っ赤な顔で夏目を見つめる。
「タクシー来たぞ」
「は、はい」
混乱も治まらぬまま、円花はタクシーに乗せられる。
「・・・・・・部長は乗らないんですか?」
「一緒に乗ったら困るだろ? 小宮が」
「う・・・・・・」
円花の反応を楽しむように、夏目は意地の悪い笑みを浮かべる。
「じゃあな、おやすみ」
ドアを閉め、タクシーはゆっくりと走り出す。
円花は振り返り、軽く手を振る夏目に見送られる。
「・・・・・・あ、ジャケット」
膝の上には、返しそびれたジャケットが。
「・・・・・・」
ジャケットを見つめ、ジワジワと沸き上がる羞恥に、顔が熱くなる。
(な、舐められた、よね?)