スイート・プロポーズ

8year...溝


総務部に勤めて4年目。

月島 美琴は、それなりに社会人としての生活を謳歌していると思う。

小宮 円花という気の合う友人もいるし、現状にさしたる不満はない。

そう、不満はない―――と思っていた。


(・・・・・・イケメン美容師、不二 薫・・・・・・)


会社帰り、雑誌を買おうと本屋へと立ち寄った美琴。

パラパラとめくっていれば、見たくもない名前を見つけてしまった。

女性の髪をカットする写真で、薫は楽しそうな笑顔を浮かべている。


「ふんっ」


雑誌に罪はないのだが、つい乱暴に元あった場所へ戻してしまう。


(あ〜・・・・・・! ヤなもん見たっ)


先日、高校時代の友人の結婚式に出席した美琴。

そこで、薫と再会した。


卒業の一ヶ月前、短い期間ではあったが、ふたりはつき合っていた。


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