スイート・プロポーズ

(なんで追いかけてくんのよ!)


美琴は駅から遠ざかる自分に舌打ちしながら、逃げることに集中する。

けれど、ヒールを履いての全速力は、怖いものがある。

なので、アッサリと捕まってしまった。


「触んないでよっ」


手を振り払い、美琴は目の前の男―――不二 薫をギロリと睨む。

睨まれた薫は、少し困った顔をして、躊躇いがちに口を開く。


「電話、待ってたんだけど。渡した名刺に書いてなかった、番号」

「あんなもの、破り捨ててやったわよ!」

「あ、そっか・・・・・・」


あからさまに落ち込む薫を一瞥して、美琴は顔を背ける。


殴ろうと決めていた。

でも、再会した時に、薫が少しでも申し訳ないような顔をしたら、許してやってもいい。

そんなことも、思っていた。


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