スイート・プロポーズ
薫はどうか知らないが、美琴には埋めようのない溝ができてしまっている。
26歳―――大人と言える年齢だけれど、ハイそうですか、とすべてを許せるほど、寛容ではない。
「美琴!」
駅に向かう美琴の肩を薫は掴み、何かを無理矢理渡してくる。
「好きだよ、美琴」
「・・・・・・私は嫌いよ」
手を払い落として、美琴は早足でその場から立ち去る。
「・・・・・・っ」
渡されたのは、新しい名刺。
(ごみ箱・・・・・・ない、か)
美琴は名刺を乱暴にバッグへ突っ込み、歩きだした。