真夜中ビター・チョコレイト
たとえそれがただの慰めでも。
本心からの言葉じゃなくても。
消えない。消えない。
吸えもしないのに、胸の奥でずっと燻り続けている煙草は、苦みを増して。呼吸さえもままならなくさせて。
きっと、どうしたって消えてはくれないのだ。
だから私は今日もこっそり、ポケットに忍ばせていたチョコレートを口に含んで。
この苦みを、中和する。
「なあ、お前がハタチになったら、籍入れようか」
「……煙草やめてくれるなら、考えてあげてもいい」
「じゃあお前も、チョコ食うのやめろ」
「なんで?」
「……甘さが残る」
移動したベッドの上で、重ねた唇。
どちらが折れるか。どちらが許すか。
煙草の苦み。
チョコレートの甘み。
舌の上で混ざり合って、溶け合って、
今日もやっぱり、私たちのキスは不味かった。
-END-