いつからだろう。
避難場所を提供してくれるなら誰でも良かったはずなのに、彼の部屋でなきゃいけなくなった。
閉ざされたドアの前で待ってしまうほど、彼の存在を求めていた。
――母親のお下がりなんて、こっちから願い下げ。
そう思っていたはずなのに、彼のぬくもりも優しさも、いつしか愛しくなってしまう。
苦いキスは嫌いなのに、その苦さがずっと私の中に残るの。
子どもじゃなければ、良かった。母親の面影を宿していなければ良かった。
でも、そうでなければきっとこの人に出会えなかった。
比べるなと言ってくれた彼は、最初から‘私’を見つけてくれていたのかもしれないね。
あなたとの苦いキスを、甘いキスで受け止める。
この不味いキスだけは、どうしても嫌いになれそうにないね。
ビターだけど優しい甘さを備えた素敵なお話です。ありがとうございました!