白い初恋
少しの間そうしていると、
不意に扉が開く音が聞こえた。
「荷物の整理はすんだの?」
母親の声だ。
ベッドの近くの椅子に座る気配がしたが
返事をしないでだまっていると
もう一度尋ねられた。
「爽…?具合悪いの?」
閉じていた目を開き母親をみると、
目が合い、沈黙が流れた。
「いいや、母さん。だいぶいいよ。」
少し口角を上げながら言うと、
その返事に安心したのか
ほっとしたような表情で微笑みかけてきた。
「よかった。」
そう言うと、彼女は席を立った。
「じゃあ、仕事に行ってくるわね。」
「うん。」
「何かあったら、連絡ちょうだいね。」
「分かった。いってらっしゃい。」
母親が部屋を出て行くのを目で確認し、
再び目を閉じた。
開いた窓からは先ほどの騒音とは一変し、
鳥の囀りと、また少し冷ややかな風が入ってく
るだけだったー。