白い初恋
肌寒さで目が覚めた。
決して快適とは言えない目覚めに
少しだけ不快感を覚えながら、
窓を閉め、母親が座っていた椅子に腰掛けた。
ふと、天井が目に入った。
点滴を吊すための金具と、換気口が見える。
視線を下に戻すと、ベッドと窓が見えた。
白い部屋ー。
この殺風景な部屋で過ごす時間の方が、
自分の部屋にいる時間よりも多い気がするー。
(どうせ、人より短い命だー。)
それならば、自分の好きなことがしたいー。
いっそ、一日中腕につながることになる点滴と
大量に飲むことになる薬や、
吐き気をよもおす抗癌剤なんかとおさらばして
もう一度、あの感覚をー。
心の底から痺れるような、あの音をー。
彼女と一緒に奏でたいー。
もう二度と叶わないその夢は、
文字通り夢でしかなくキュッと下唇を噛んだ。