小さな光 ~月と太陽~
軽く触れ、直ぐに離れていった藤の唇。


けどそんな軽いキスに納得する訳がないあたしは藤に頼んだ。



「藤もっと…もっと沢山」


「アズ、どうした?さっきから変だぞ」


「別にあたしは変じゃないもん。
藤とキスしたいって思っちゃいけないの?」


「いけなくは無いけど…」


「じゃあキスしてよ」



本当はあたしの我が儘。


朱音さんの事を考えないようにしていたけど、どうしても朱音さんのあの冷たい視線が思い出される。


あたしじゃ『藤とは釣り合わない』と言われているようだった。


朱音さんに藤が取られてしまう様であたしは不安なんだ。


「藤…」


あたしが名前を呼ぶと降ってきた唇。


ただ触れるだけではなく深いキス。









お願いだからあたしの傍から離れないで。


そう想いを込めてキスをした。


あたし達は気付かなかった。

あたしたちの様子を遠くから見ていた人がいた事を。










< 117 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop