小さな光 ~月と太陽~
ガタンッとイスから立ち上がりあたしに近づいて来る様子だ。



「来ないで!」



あたしの精一杯の拒絶。


来ないで、来ないで、来ないで、来ないで、来ないで。


…………あたしにこれ以上近づかないで。



「アズ…」


「あたしは、藤と一緒に、いちゃダメなんだよ。

あたしといると、藤は幸せに、なれないよ…」



次第に涙声になっているのが自分でもわかる。


顔はぐちゃぐちゃ。


だけど、もう止まらない。


止められない。



「あたし、知っているんだから。今日は朱音さんと会っていたから遅くなったんでしょ?

2人は婚約しあった仲だって事も。それに今日の話の内容だって分かるんだから。

朱音さんに『やり直そう』って言われたんでしょ」



幸せになってね、藤。



「だから、あたしと別れて」




ずっとすっと藤の事は



大好きだから…








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