小さな光 ~月と太陽~
あたしはジーッと藤の方を見て「どっちがおいしい?」と視線を送った。


あたしの視線に気付いた藤はニコッと笑いお母さんに視線を移した。


「僕はどちらのご飯もとてもおいしいです」



この猫被り藤!


普段、あたしにそんな優しく話さないじゃん。

それに『僕』って…

さっきは『俺』だったじゃん。


「あーあ、絶対にアズよりおいしいと思ったのに」


「どちらもおいしいです」



ふぅーん。

『どちらもおいしいです』か。


どちらも、ね。


どちらも…




「あらあらアズ、どうしたの?」


「別に」


「あー藤君が“アズのご飯”って言わなかった事で拗ねているんだ。

可愛いねアズ」


「拗ねていないもん」



そうだよ、あたしは拗ねているんだもん。


藤と毎日一緒に居るのに、たまたま居るお母さんと比べて『どちらもおいしい』って言われたら誰だって同じ気持ちになるよ。


それにあたしは藤の彼女なのに…

藤の好みだって他の人以上にわかっているつもりだったのに…







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