小さな光 ~月と太陽~
リビングのドアを開けて…

あたしの心はまた傷ついた。



『あ~はい、わかりました。
では明日お願いします』



藤がまだ電話で話していた。


パタンッと携帯を閉じてあたしを視界に入れた。


「アーズ、こっちおいで」



そんなに優しくあたしを呼ばないで。

分からなくなる。


藤は何を考えているの?


「アーズ?こっちおいで」


あたしはその場から足が動かなかったが…
ゆっくり動かした。


ソファーの上に座りその隣にドカッと藤が座った。



「アズ…最近何かあったか?」


「何かって?」


「普段起こらなかったこととか…」


あった…


「…………無かったけど」


今はまだ『あった』だなんて言えない。

言ったら…
藤と別れなくてはいけなくなる。



……………もう少しだけ、一緒にいたい。









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